デフレ脱却をうたった大型の補正予算が発表されました。でも新政権がやろうとしている対策が的外れである、という論文を見つけましたのでご紹介します。
論文の著者は「超整理法」の一橋大学名誉教授野口悠紀雄先生。(雑誌ファイナンシャルプランニング1月号)
日本経済が抱える最大の問題はデフレと人口減少であるといわれているがそれは大きな間違い。
1.消費者物価指数が下落しているのは大企業が生産する耐久消費財の価格が著しく値下がりしているからであるが、これはいまに始まったことではなく1990年代から継続している現象。
これは中国、アジアをはじめとする新興国の工業化、低賃金労働力による安い工業製品生産によって引き起こされたものであって国内要因によって生じたものではない。
先進国の高かった物価水準が新興国に引きずられて下落したもの。(逆に新興国はこれからインフレに悩むことになる)
2.耐久消費財の価格が下落する半面で、国内要因で決まるサービス価格は上昇している。90年から08年の間に保険医療の消費者物価指数は18%も上昇している。
3.デフレは金融政策によって生じているのではないので金融緩和をいかにすすめたところで解決はできない。
4.これまでの物価変動(上昇)要因は総需要の変動ではなく、エネルギー価格(原油)の上昇が大きな要因となっている。
5.つまり工業製品の価格が低下することが問題なのではなく、名目賃金が低下していることが解決すべき大きな問題である。02年から11年までの間、製造業の雇用が約133万人減少したが、医療福祉の雇用が約240万人増加している。しかしながら賃金水準が低い(後者は前者の約1割減)ために全体としての賃金が下落している。
6.介護従事者の賃金が低いのは価格が介護保険の枠内で決まられているからであり、その結果として供給が不足し超過需要が生じている。(老人ホームへの入所が何年待ちという状態)
つまりこの分野での価格を調整しないことが、従事者の所得低下をもたらし一方で超過需要が発生しているのである。
課題はサービス産業の生産性をどうすれば向上できるか、である。
7。日本全体として必要なのは金融緩和を進めること(国債をどんどん発行して日銀がそれを購入すること)でなく生産性の高いサービス産業を構築すること。
7.こうして考えると日銀による「物価上昇目標」は的外れな政策、本当の目的(国債を買わせるという)を隠す隠れ蓑にほかならないので(郵政民営化前は大蔵省が管轄していた郵貯が国債を購入してくれていたが不可能となったので今度は日銀に買わせようというのが政府の本音)、その目標はいつになっても達成できるはずはなく、結局日銀による国債買い上げがいつまでも続いて、そして財政規律(財政再建)は崩壊していくのである。
今の政府がやろうとしていることの隠された意図と的外れさ、危険さを見事に論評していて、読んでいて恐ろしくなってきました。
本来政府がやるべき政策を日銀に押し付けているだけですね。
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