日銀は今後2%の物価上昇を目標とする、としています。
一方多くの国民が保有する資産の大部分は預貯金です。(貯蓄から投資へ、という掛け声にもかかわらずですね)
さてよく預貯金は物価上昇に弱い、といわれていますが、これが本当だったのか過去50年にわたるデータをもとに分析した興味深いレポートを最近読みました。(kinzaiファイナンシャルプラン8月号より)
これによれば1960年から10年毎に区切ってみた場合の消費者物価指数と預貯金倍率(その期間内で何倍に増えたか)をみると「預貯金は物価に負ける、という定説」には疑問符がつく結果となっています。
例:1980年~1989年 物価1.28倍 預貯金1.66倍
1990年~1999年 物価1.13倍、預貯金1.28倍
2000年~2009年 物価0.97倍、預貯金1.01倍
なお完全に物価に負けたのは1970年~1979年(物価2.36倍、預貯金1.75倍)ですがこの時期も10年でなく20年スパン(1970年~1989年)でみると物価3.02倍、預貯金2.91倍)ほぼ互角です。
おそらく戦後の混乱期やオイルショック時の狂乱物価の時の物価上昇率と当時の預金金利を体験したことのある人には預金の目減りの印象が強く残っていて「預金は物価上昇に弱い」という定説を信じるようになったのでしょうね。
もっともこの数字は預金の利率を物価指数と単純比較したものですが、実は1987年に一般の家庭を対象としたマル優制度が廃止されたことによって利息に対して20%の税金が課税されるようになったのでNETベースでみると物価に「負けていない」とはいいきれない側面があります。
では今後も虎の子の資産を預貯金で運用して大丈夫だろうか、ということですが、実は我が国は預貯金金利の完全自由化(1990年以降)以降本格的な物価上昇時代を一度も経験していません。
仮に物価上昇時代が到来して預貯金金利が物価上昇と同じ程度の利率となったとしても現在ではほぼ20%の利子課税があるのでその分だけは物価に負けることになります。
たとえば5%の物価水準が続いて、預貯金金利も5%であったとしても毎年ほぼ1%ずつ目減りしていく計算になります。
長期的にみた場合、こうした物価上昇に対するリスクをヘッジして(預貯金以外での)資産運用をしていく、ということが求められるのでしょうね。
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